Experiment
 

 マルチアンビル装置を用いた超高圧実験に関するメモです。


1.実験手順
(1) 実験の計画
  1) 実験目的 圧力較正実験、超高圧高温実験、超高圧高温変形実験などを決める。
  2) 実験条件 圧力、温度、保持時間、試料容器(酸素雰囲気など)、歪速度、試料体積を決める。
  3) アセンブリーの選択 実験目的、実験条件に応じたアセンブリーを選択する。
  4) 実験日時の決定と装置の予約 スケジュールボードに名前を記入して予約する。
(2) 実験の準備
  1) (一段目)アンビルの交換と調整
  2) セルアセンブリーの準備
(3) 超高圧実験
  1) 室温圧力較正実験
  2) 高温圧力較正実験
  3) 本実験
(4) 実験結果の評価
【室温下での圧力較正実験】プレス荷重−電気抵抗の図から圧力定点でのプレス荷重を判定する。
【超高圧高温実験】回収試料の分析をする。
【高温下での圧力較正実験】回収試料の結晶相をラマン分光法やX線回折法によって同定する。
【全般】ランテーブルを作る
(実験番号、実験圧力、プレス荷重(油圧)、実験温度、高温保持時間、歪速度、歪量、セルアセンブリー、回収相など)。

2.圧力発生方式・超高圧発生装置
(1) 加圧方式
MA 6-8
MA 6 Carter et al. (1964 J. Geol.)
MA 6-6 Nishiyama et al. (2008 HPR)
(2) プレス
1) プレスの種類
種類 油圧ラム数 油圧ラム配置 文献
一軸圧縮プレス
(Uniaxial Press)
1 上ラム方式
(ダウンストローク)
下ラム方式
(アップストローク)
D-DIA 装置
(D-DIA Apparatus)
3 上下ガイドブロック内 Wang et al. (2003 RSI)
六軸装置(Six-Ram Press) 6 Carter et al. (1964 J. Geol.)
分割球ラバープレス方式 なし
テトラアンビル装置 4
六角穴付きボルト なし Kawazoe (2012 RSI)
2) プレスフレーム(Press Frame)
種類
窓枠型(厚板型) Window-frame type
四本柱型 Four-column type
二本柱型 Two-column type
3) 油圧駆動システム(Hydraulic Drive System)
油圧ポンプ Hydraulic Pump
増圧器 Intensifier
  プランジャーポンプ Plunger Pump 微量吐出ポンプ
    ボールねじ、台形ねじ
  サーボモーター Servo Motor
ロータリーポンプ Rotary Pump
油圧 700 気圧 標準規格
ラムストローク
4) ガイドブロック Guide Block
@ 種類
[111] 型 中心の立方体空間の[111] 方向が鉛直方向のもの。
加圧効率が[100] 型に比べて√3 倍大きい。
分割球型
分割柱型
若槻型
ウォーカー型 Walker et al. (1990 American Mineralogist)
[100] 型 中心の立方体空間の[100] 方向が鉛直方向のもの。
DIA-Type プレス荷重の3分の1が一段目アンビルにかかる。
スライディングブロック(サイドブロック)が4個。
スライディングブロック引き上げアーム、フック
(小さなスライディングブロックでは設置しないこともある)。
剛性差補正型ガイドブロック。
なし 6軸装置など。
A 材料
SNCM 鋼 ニッケルクロムモリブデン鋼
熱処理温度が重要。
ベリリウム銅(Cu-Be) 非磁性材料
(3) 設置
床の強度
ピットの有無
搬入方法(経路)
壁からの距離
天井の高さ
電源からの距離
加熱ユニットの場所
(4) トラブル
ブローアウト
油圧ラムの戻しが終わらない ストロークエンド検出機構がはたらいていない。

3.圧力発生
(1) アンビル
  1) 材質
   @ 材質リスト
材質 材種 メーカー メモ
超硬合金 TF05 冨士ダイス
[Link]
とても硬い超硬合金。
主に使用 (e.g., Kawazoe et al., 2011)。
高温実験では断熱を良くする必要があるみたい
超硬合金 TF06 冨士ダイス TF05 よりは硬くない超硬合金。
 使用例:Kawazoe & Yamada (2012)。
超硬合金 F09 冨士ダイス 川井型装置の二段目アンビルとして使用。
超硬合金 F10 冨士ダイス 6-6 加圧実験の際の一段目として使用。
SMAP1, SMAP2, SMAP3 で使用されている(内海、2004)。
超硬合金 MF10 冨士ダイス Ni バインダー。非磁性。中性子実験向き。
超硬合金 BL130 住友電工
ハードメタル
TF05 とTF06 の間の圧力発生効率
超硬合金 F グレード タンガロイ 東芝と呼ばれることもある。
超硬合金 ha-2.4% hawedia とても硬い超硬合金。
超硬合金 ha-6% hawedia
超硬合金 ha-7% hawedia バイロイト大学での現在の標準材種(少なくとも2013-2015年)。
焼結ダイアモンド WD700C 住友電工 Co バインダー。放射光X線を透過しない。
焼結ダイアモンド Versimax SiC バインダー。放射光X線を透過する。
キュービックBN BNS800 住友電工 Coをバインダーに用いていないため放射光X線が透過出来る。
放射光変形実験で主に使用 (Kawazoe et al., 2011)
SiC FCC50 フジダイス データ不足のため予備実験の必要有り
ZrO2 使用例:上床 (2008)
SKH51 26mm角二段目超硬アンビルを押す時の一段目アンビルに使用。
   A 焼結助剤
Co
Ni 中性子実験に使用する。
SiC 放射光X線を透過する。
  2) 二段目アンビルの大きさ
    @ 川井型装置用二段目アンビル
一辺 材質
54 mm 超硬合金 バイロイト大学で5000 トンプレスを用いて大きな荷重を掛けるときに使用
32 mm 超硬合金 ヨーロッパでの超硬合金製アンビルの標準的な大きさ
26 mm 超硬合金 日本での超硬合金製アンビルの標準的な大きさ
14 mm 焼結ダイアモンド 焼結ダイアモンドアンビルの現在の標準的な大きさ
10 mm 焼結ダイアモンド 使用例:Kato et al. (1992), Kondo et al. (1993), Kato et al. (1995)
9.5 mm 焼結ダイアモンド 使用例:Utsumi et al. (1992 Geophysical Monograph)
4.85 mm 焼結ダイアモンド 使用例:Ohtani et al. (1989)
    A 二段式キュービックアンビル装置(6-6方式)用二段目アンビル
底面の一辺
26 mm
18 mm 先端一辺 27 mm の一段目アンビルと組み合わせて使用。
12 mm 先端一辺 27 mm の一段目アンビルと組み合わせて使用。
  3) 二段目アンビル先端の大きさ
    @ 川井型装置用二段目アンビル
先端一辺の長さ 使用例
17 mm
15 mm
11 mm バイロイト大学で需要が多い
8 mm
5 mm
4 mm
3 mm
2 mm Kondo et al. (1993),
Kawazoe and Ohtani (2006 PCM)(圧力較正曲線有り)
1.5 mm Kato et al. (1992)
1.0 mm Ohtani et al. (1989), Kato et al. (1992)
0.5 mm Ohtani et al. (1989)
    A キュービックアンビル装置用二段目アンビル
先端一辺の長さ 最高発生圧力 温度 使用例
25 mm 5.5 GPa 高温 東ら(2003 固体物理)
23.5 mm 8 GPa 室温 Wang and He (2012 High Press. Res.)(圧力較正曲線有り)
20 mm Shimada (1981 Tectonophysics)
15 mm 7 GPa 高温 東ら(2003 固体物理)
10 mm 10 GPa 高温 東ら(2003 固体物理)
8 mm 5.5 GPa 高温 東ら(2003 固体物理)
6 mm 7 GPa 高温 内海(2004 高圧力の科学と技術)(圧力較正曲線有り)
5 mm
4 mm 12 GPa 室温 川添 (2014 高圧力の科学と技術)(圧力較正曲線有り)。
TF05 とTF06 の比較。
10 GPa 高温・室温 Kawazoe and Yamada (2012 High Press. Res.)(圧力較正曲線有り)
10 GPa 高温 内海(2004 高圧力の科学と技術)(圧力較正曲線有り)。
3 mm 19 GPa 室温 川添 (2014 高圧力の科学と技術)(圧力較正曲線有り)。
 圧力媒体材質の比較((Mg,Co)O、ZrO2、MgO)。
13 GPa 高温 内海(2004 高圧力の科学と技術)(圧力較正曲線有り)
高温 Kawazoe et al. (2010 PEPI)(圧力較正曲線有り)
2.5 mm 25 GPa 室温 Kawazoe et al. (2010 High Press. Res.)(圧力較正曲線有り)
2.0 mm 室温 川添 (2014 高圧力の科学と技術)(圧力較正曲線有り)。
 TF05、BL130、TFS06、TF06 の比較。
1.5 mm 室温 川添 (2014 高圧力の科学と技術)(圧力較正曲線有り)。
 アンビル先端長の比較。
Kawazoe et al. (2012 RSI)
1.0 mm 室温 Yagi and Akimoto (1977)
  4) 一段目アンビル
27 mm
(2) 圧力媒体
  1) 材質
材質 品名 メーカー メモ
(Mg,Co)O OM-CO 美濃窯業 Coの添加によってMgOよりも断熱性が良い。
Cr2O3 添加MgO に比べて加工が少ししにくい。
Cr2O3 添加MgO OM-CR 美濃窯業 Crの添加によってMgOよりも断熱性が良い。
(Mg,Co)O に比べて加工がしやすい。
ZrO2 OZ-8C 美濃窯業 断熱性が良い。比較的中性子を透過する。
高温高圧下において相転移する。
MgO OM 美濃窯業 塑性的に柔らかいので静水圧性が良い。
Co・Crを添加したものと比べると断熱性が良くない。
MgO OM-HD 美濃窯業 OMよりも密度の高いもの。
ボロンエポキシ アモルファスボロンに硬化前のエポキシ樹脂を混ぜて作る。
X線散乱パターンをあまり出さない。
800 ℃以下では断熱性が良い(内海、2004)。
パイロフィライト 高温でアルミナ・シリカへ分解する。
高温高圧下においてシリカが高圧相に相転移する(内海、2004)。
焼成パイロフィライト 高温でアルミナ・シリカへ分解する。
高温高圧下においてシリカが高圧相に相転移する(内海、2004)。
  2) 形状
稜あり
稜なし
(3) ガスケットなど
  1) ガスケットの機能
(1)圧力の封止、(2)アンビルストロークの確保、(3)アンビル間の絶縁、(4)熱電対の経路、(5)放射光X線の経路。
  2) 材質
パイロフィライト 天然物を使用する。
焼成パイロフィライト 焼成する前よりも固くなる。
(1)熱電対−アンビル間の電気絶縁、(2)ガスケットの支持。
テフロンテープ (1)熱電対−アンビル間の電気絶縁、(2)ガスケットの支持。
カプトンテープ (1)熱電対−アンビル間の電気絶縁、(2)ガスケットの支持。
テフロンブロック ガスケットの支持。
  3) ガスケット形状
6個の長い台形柱+6個の短い台形柱
12個の台形柱
12個の台形柱+6個の直方体 例:Kondo et al. (1993)
斜面付き台形柱
  4) 接着剤
アロンアルファ ゼリー状 東亜合成 ガスケットを接着する。
写真用セメダイン セメダイン ガスケットやスペーサーなどをアンビルに接着する。
ピットマルチ2 トンボ ガスケットをアンビルに接着する。バイロイト大学で使用。
  5) 電気絶縁シート(アンビル背面)
グラス−エポキシ
マイカ
(4) プレス
シート(DIA型ガイドブロック) ガイドブロックとスライディングブロックの間に歳入する。
スライディングブロックの滑動のため。
ガイドブロック−スライディングブロック間の電気絶縁のため
(加熱に必要)。
グラスエポキシ 0.2 mm 厚くらい。
略してガラエポと呼ばれることもある。
テフロンシート 0.2 mm 厚くらい。
テフロンテープ バイロイト大学のD-DIA型変形装置で使用。
カプトンシート
  3) ベースプレート・ステージ
ベースプレート
ゴニオステージ 放射光実験で使用する。
X-Y-Z-回転
  4) 会社
    @ プレス会社
住友重機械テクノフォート UHP
シリーズ
バイロイト大学、愛媛大学、SPring-8で使用。
シーティーファクトリー
(旧アールデーサポート)
トライエンジニアリング(TRY) 尾崎 (2004 高圧力の科学と技術)
南葵エンジニアリング工業
Max Voggenreiter
(マックス・フォーゲンライター)
ドイツのプレス会社。バイロイト大学で使用。
会社はバイロイト市の近くにある。
    A 油圧装置会社
理研機器 [Link]

4.高温発生
(1) 高温発生用セルアッセンブリー
  1) ヒーター
  @ 材質
材質 会社 型番 メモ
グラファイト 厚さを変えることで電気抵抗を変えることが出来る。
ダイアモンド安定温度圧力領域では、グラファイトのダイアモンド化に注意する必要がある。
実験の温度・圧力・時間の関数。
ダイアモンド形成触媒作用がある物質との接触を避ける。
電気抵抗が低い。比較的実験温度が高い実験では大電流を流すことが出来るように導線・電極箔などの大きさに配慮する。
モデリングマシーンで工作する際は粉塵が飛ばないように配慮した方が良い(らしい)。
LaCrO3 製造
ニッカトー
購入
モトヤマ
S6A0 比較的高圧で使用する。
電気抵抗が比較的高い。
ロットごとに性能が変わる可能性がある。
50x50x10mmで購入(バイロイト大学)。
レニウム 高融点金属なのでかなり高温までの使用が可能。
電気抵抗が低い。
白金 使用例:Higo et al. (2006 PEPI)
ボロンドープ
ダイアモンド
TiC-ダイアモンド 使用例:Kato et al. (1992), Kato et al. (1995)
TiC 使用例:Irifune et al. (1998 Geophysical Monograph)
WC-ダイアモンド 使用例:Ohtani (1987 Geophysical Monograph)
  A 形状
ストレートチューブ
ステップチューブ
円筒箔
ディスク
  2) 断熱体
  @ 材質
材質 使用例
ジルコニア
LaCrO3 内海 (2004)
Kawazoe and Ohtani (2006 PCM)
  A 役割
ヒーターからの熱をアンビル・ガスケットに伝えない。
アンビルの温度が上昇すると強度が低下し、破壊の原因になる。
ガスケットの温度が上昇すると塑性強度が低下し、圧力降下・ブローアウトの原因になる。
  3) セル図
アンビル ヒーター ヒーター電極 圧力媒体 参考文献
先端一辺 材質 形状 材質 形式
2.0 mm LaCrO3 円筒
(ステップなし)
Mo箔 ZrO2 三分割 Yamazaki et al. (2000 PEPI)
2.0 mm LaCrO3 円筒
(ステップなし)
Mo箔 (Mg,Co)O, MgO 三分割 Kubo et al. (2002 PEPI)
2.0 mm LaCrO3 円筒
(ステップなし)
Mo箔 (Mg,Co)O 三分割 Litazov et al. (2005 EPSL)
2.0 mm Re 円筒(箔) なし (Mg,Co)O 一体型 Kawazoe and Ohtani (2006 PCM)
(2) 温度測定
  1) 熱電対
  @ 種類
組成 タイプ名 メモ
W97Re3-W75Re25 Dタイプ 高融点金属の熱電対。
起電力に与える圧力効果が少ないと見積もられている。
W95Re5-W74Re26 Cタイプ 高融点金属の熱電対。
W-W74Re26 Gタイプ 高融点金属の熱電対。
  A 圧力効果
組成
アルメル−クロメル Getting and Kennedy (1970 J. Appl. Phys.)
Pt-Pt90Rh10 Getting and Kennedy (1970 J. Appl. Phys.)
W97Re3-W75Re25 Williams and Kennedy (1969 JGR)
Li et al. (2003 High Pressure Research)。
  B 保護チューブ
Al2O3 四穴菅 セルアッセンブリーの中。
Al2O3 一穴菅 セルアッセンブリーの中。
PTFE チューブ バイロイト大学で使用しているものの耐熱温度は260℃。
  C 会社
ニラコ
OMEGA バイロイト大学で使用している。
Goodfellow 見積を取ってから購入を考える。
Engelhard 見積を取ってから購入を考える。
  2) 地質温度計
輝石温度計
  3) 相変化
  4) 温度勾配
輝石温度計 試料断面の組成を測る。
相転移進行度
高温相と低温相の分布 液体−部分熔融部分−固体
固体高温相−共存部分−固体低温相
  5) 注意点
電力−温度関係 プレス荷重で変化する。
試料温度を電力−温度関係から見積もる場合には、
プレス荷重を考慮する必要がある。
昇温中にトレンドが変わったら、不具合のサイン。
電力を上げても温度があまり上がらないなど。
(3) 加熱電源
  1) 種類
交流電源 Takasago AA2000XG 一次側と二次側がある。
トランスフォーマーを使用して、電圧−電流の使用範囲を
変えることができる。
直流電源
  2) 計測・表示・記録
デジタルマルチメーター Agilent 34410A 愛媛大学で使用。
交流電流計 HIOKI 9010 [Link] 愛媛大学で使用。
PC
PCI-GPIBボード National Instruments
NI PCI-GPIB
LabVIEW
  3) 制御
Eurotherm 2404
LabVIEW
(4) トラブル対策・対応
  1) 備え
  @ 実験前
項目
加熱電源の最大出力 確認して記録しておく。
加熱電源の電圧・電流値の上限 確認して記録しておく。
加熱導線ケーブル 低抵抗ヒーターを使用する場合には、十分に太くする。
  A 加圧中
ヒーター抵抗 測定・記録しておく。
通常より有意に高い場合は、異常がある。
  A 加熱中
時間・電圧・電流・電力・抵抗・温度の値 実験記録ノートに書いておく。
電力−温度をその場でプロットする。
過去の電力−温度関係をプロットする。
時間−電圧・電流・電力・抵抗・温度をプロット・記録する。
LaCrO3のヒーター抵抗 抵抗が大きく変わるときはゆっくり昇温する。
  2) トラブル後
  @ 加熱電源の上限の確認
電圧・電流 近くないかを確認する。
近い場合、交流加熱の場合
トランスフォーマーで電圧−電流範囲を変える。
  A 異常時の症状の確認
電圧・電流・抵抗・温度の値を見直す。
異常の時間スケールを見直す。短時間に(急に)起きた現象か。
  3) 加熱異常の例
事項 対策
加熱導線ケーブルが熱くなる ケーブルを太くする。
ガイドブロック電極接合部分が熱くなる 接触を良くする。
電極の異常加熱 電極の断面積を大きくする。
(太くする、広くするなど)
ヒーターと周りのものとの反応 反応する材料を使わない。
ヒーターと漏れた試料の反応 試料をカプセルにしっかり封入する。

5.変形実験
(1) 変形ピストン
Al2O3 含水条件下や数GPa 以上での高温高圧下で試料との反応がある。
W Kawazoe et al. (2013 PEPI)。ウォズリアイト変形実験。
Ohuchi et al. (2012 EPSL)。含水条件下でのカンラン石変形実験。
ダイヤモンド Ohuchi et al. (2012 EPSL)。含水条件下でのカンラン石変形実験。
(2) 歪測定
歪マーカー どの段階で変形しているか。加圧中、相転移中、アニール中、変形中。
(3) 応力測定
2次元放射光回折

6.カプセル
(1) 酸素雰囲気制御
  1) バッファー 制御される酸素分圧は温度・圧力の関数となる。
Fe-FeO
Mo-MoO2
Co-CoO
Ni-NiO
Re-ReO2
Ir-IrO2
Pt-PtO2
  2) 酸化剤
KClO4
(2) 水の封入
材質 用途 参考文献 メモ
Pt 水の封入 融点:8 GPaで~2280 K
(Kavner & Jeanloz, 1998 J. Appl. Phys.)
AuPd 水の封入
Ag 融点:8 GPaで~1600 K
(Errandonea, 2010 J. Appl. Phys.)
Pd70%Ag30% 水の封入、放射光X線の透過 Sano et al. (2006 PEPI)。
Inoue et al. (2006 AGU monograph)。
Ohuchi et al. (2012 EPSL)
Sano et al. (2006) では1400℃以下で使用。
(3) マルチチャンバー法 同一温度・圧力条件での比較ができる。
組成
熔融温度・サブソリダス相
(4) カプセルダイ

7.(一段目)アンビルの交換と調整
(1) (一段目)アンビルの交換
(2) ダミーブロックの加圧と評価
実際の実験の目標荷重までダミーブロックを加圧し、5分程保持した後に脱圧する。
(3) シムによる調整
脱圧したダミーブロックの面間を計測する。面間が大きい面に接するアンビルの裏にシム箔を入れる。
(4) ダミーブロックの加圧と評価によるチェック

8.圧力較正
(1) 常温圧力較正
  1) 圧力領域と較正物質
圧力領域 組成 相変化 文献 圧力 圧力スケール
2.5 GPa Bi I 相−II 相 Jeffery et al.
(1966 J. Appl. Phys.)
2.62 (0.08) GPa Decker (1965)
NaCl
Heydemann
(1967 J. Appl. Phys.)
2.550 (0.006) GPa
Decker
(1971 J. Appl. Phys.)
2.52 (0.3) GPa Decker (1971)
NaCl
Ohtani et al.
(1977 Jpn. J. Appl. Phys.)
2.5 (0.3) GPa Decker (1971)
NaCl
Bean et al.
(1986 Physica)
2.550 (0.006) GPa
(著者による推奨値)
Getting
(1998 Metrologia)
2.520 (0.005) GPa
2.7-2.8 GPa Bi II 相−III 相 Jeffery et al.
(1966 J. Appl. Phys.)
2.91 (0.08) GPa Decker (1965)
NaCl
Bean et al.
(1986 Physica)
推奨値なし
4.3 GPa Bi III 相−IV 相 Nichols (1971) 4.27 (0.04) GPa
6 GPa ZnTe
7.7 GPa Bi V 相−VI 相
(VI 相は、
V 相やVII 相と
表記されている
場合がある。)
Jeffery et al.
(1966 J. Appl. Phys.)
7.57 (0.13) GPa Decker (1965)
NaCl
Decker (1971 J. Appl. Phys.) 7.6 (0.2) GPa Decker (1971)
NaCl
Ohtani et al.
(1977 Jpn. J. Appl. Phys.)
7.4 (0.5) GPa Decker (1971)
NaCl
Bean et al.
(1986 Physica)
7.7 (0.2) GPa
9 GPa Sn Ohtani et al.
(1977 Jpn. J. Appl. Phys.)
9.3 (0.5) GPa Decker (1971)
NaCl
9.6 GPa ZnTe
12 GPa ZnTe A. Ohtani et al.
(1979 Rev. Sci. Instrum.)
11.7 (0.4) GPa Decker (1971)
NaCl
14 GPa Pb Yagi and Akimoto
(1976 J. Appl. Phys.)
14.2 GPa Decker (1971)
NaCl
Ohtani et al.
(1977 Jpn. J. Appl. Phys.)
13.2 (0.7) GPa Decker (1971)
NaCl
16 GPa ZnS Yagi and Akimoto
(1976 J. Appl. Phys.)
16.2 GPa Decker (1971)
NaCl
Ohtani et al.
(1979 Rev. Sci. Instrum.)
15.3 (0.5) GPa Decker (1971)
NaCl
19 GPa GaAs Yagi and Akimoto
(1976 J. Appl. Phys.)
19.3 GPa Decker (1971)
NaCl
Ohtani et al.
(1979 Rev. Sci. Instrum.)
17.7 (0.5) GPa Decker (1971)
NaCl
22 GPa GaP A. Ohtani et al.
(1979 Rev. Sci. Instrum.)
22.2 (0.6) GPa Decker (1971)
NaCl
  2) 試料作成・取扱いの注意
Bi @小さな塊(shot)を250 ℃程度に熱して柔らかくする。
 柔らかくなったものを厚さ30 μm程度に薄くしてから使う。
 (融点が272 ℃なので、温度をそれ以上に上げないようにする。)
A箔をカミソリで幅200 μm程度、長さ1.5 mm以上のように細長く切る。
 この形状のBi線は脆く壊れやすいので、丁寧に扱う。
B電気抵抗が小さいので、電気抵抗測定には(疑似)四端子法を用いる。
ZnTe 粉末状態で保存している場合には酸化に気を付ける。
酸化している場合には電気抵抗が低く出て、失敗になることがある(ようだ)。
  3) 電極
材質 形状
Cu
Cu
Mo
  4) 測定・記録
デジタルマルチメーター Agilent 34410A 愛媛大学で使用。
Keithley 2010 バイロイト大学で使用。
LabVIEW
実験記録ノート
  5) 参考文献
Bean et al. (1986 Physica B+C) [Link]
伊藤 (2003), 高圧地球科学における多数アンビル装置の圧力校正, 高圧力の科学と技術, 13, 265-269.
K. Kusaba, L. Galoisy, Y. Wang, M.T. Vaughan, and D.J. Weidner (1993), Determination of phase transition pressures of ZnTe under quasihydrostatic conditions, Pure Appl. Geophys. 141, 643-652.
(2) 高温圧力較正
  1) 圧力領域と較正物質
圧力領域 温度領域 組成 相変化 文献
3 GPa 1000 ℃ SiO2 石英
- コーサイト
Bose and Ganguly (1995 Am. Mineral.)
5 GPa
6 GPa
1000 ℃
1300 ℃
Fe2SiO4 ファヤライト
- リングウッダイト
Yagi et al. (1987 JGR)
7 GPa
10 GPa
1000 ℃
1800 ℃
TiO2 ルチル
- TiO2 II相(α-PbO2)
Akaogi et al. (1992)
Akaogi et al. (2012 PCM)
9-10 GPa SiO2 コーサイト
- スティショバイト
13-14 GPa (Mg,Fe)2SiO4 カンラン石
- ウォズリアイト
19-20 GPa (Mg,Fe)2SiO4 ウォズリアイト
- リングウッダイト
23-24 GPa (Mg,Fe)2SiO4 リングウッダイト
- Mg-ペロブスカイト
+ (フェロ)ペリクレース
  2) 室温圧力較正曲線との違い
@ 体積”膨張”による圧力上昇
A ガスケットの軟化による圧力降下
B 相転移による体積減少による圧力降下
(3) 会社
Alfa Products
(4) 参考文献
伊藤 (2003), 高圧地球科学における多数アンビル装置の圧力校正, 高圧力の科学と技術, 13, 265-269.

9.放射光実験・X線回折
(1) X線源
Cu Fe(やCo)を多く含む物質には不向き。
Cuの特性X線がFe(やCo)の吸収端にほぼ一致するから。
回折ピークの強度が弱まる。
Fe(やCo)からの蛍光X線でシグナル/ノイズ比が悪くなる。
Co
Fe
Cr
Mo
(2) 放射光施設
  1) SPring-8
BL04B1
  2) 高エネルギー加速器研究機構(KEK)
PF-AR NE7A、PF-AR NE5
(3) 光学系
  1) 光源
偏向電磁石
ウィグラー
モノクロメーター
  2) スリット
四象限スリット 大まかな大きさに切る。強度の強い所に合わせる。
入射スリット 細かな大きさに切る。
受光スリット
  3) 検出器
  @エネルギー分散
固体検出器(SSD、Solid State Detector)
  A角度分散
X線CCD
フラットパネル
  BCCDカメラ
静止画
動画
レコーダー
  4) プレスステージ
パルスモーターコントローラー
スキャン
搖動
切替機

10.工作
(1) 工作
ピンセット
デジタルノギス ミツトヨ
実体鏡
LEDライト Leica LED3000 RL, 58 mm [Link] ランプの交換が不要。
(2) 切断
はさみ
カミソリ刃
ダイアモンドやすり
低速精密カッター
ダイアモンドブレード
(3) 接着
ゼリー状瞬間接着剤
液体状瞬間接着剤